NORD Stage 3 88が壊れた
NORD Stage 3 88が電源がつかなくなりました。かつ特定の鍵盤だけベロシティが強くなるという不具合も出ていました。本記事では故障の状況や修理の方法をまとめます。
- NORD Stage 3 88が壊れた
- 修理結果
- 故障の状況
- 故障の原因と修理の方向性
- 修理器具・部品
- 同じ修理手順が効果があると思われる機種
- 分解手順
- センサの清掃
- MCUの交換
- 動作確認
- 後記
- 参考記事
修理結果
結果的に修理は故障とは異なる部位のケーブルを切ってしまったようで失敗だったのですが、修理方法は正しかった可能性もあるので、参考までに記事にします。

故障の状況
電源不具合
- 電源が徐々に点きづらくなる
- はじめは電源ボタンを押しても立ち上がらないことがたまにある
- 電源を押しても立ち上がらない頻度があがる。押しなおすと点く
- 電源を押しなおしてもつかなくなる。しかし、電源を入れた状態で数分待ってから一瞬切ってからつけると電源が入る
- とうとうどうやっても電源が入らなくなる
- 電源が一度点くと安定する
特定の鍵盤だけベロシティが強い
故障の原因と修理の方向性
電源不具合
- 大きく分けて2つ原因が報告されている
- 今回はMCUの故障とあたりをつけて交換した
- 表面実装部品の交換になるため, 難易度が高い
鍵盤のベロシティ不具合
- 各鍵盤に2個センサが搭載されていて鍵盤が押されたときに2つのセンサが時間差で押され、その時間差でベロシティを検出する仕組みになっている。片方のセンサのタイミングが正しくに検出されないとベロシティがおかしくなる
- 原因はホコリや毛など異物の混入との報告が多数

各鍵盤に2個ずつセンサがならんでいる
- 分解し、ホコリをとって清掃
修理器具・部品
- トルクスドライバー T8, T25, T30が必要 (記事によってはT6, T20, T25と書いてあるので機種によるかも) NORDのネジは星形の特殊なものなので
- 耐熱手袋 とがった部品があるので分解するときに軍手などしたほうがいいかも
- プラスドライバー
- Texas Instruments AM1705DPTP4: 交換する部品
- AM1705にバリエーションがありますが、少なくともNORD Stage 3 88はDPTP4でした。
- https://www.mouser.com/ProductDetail/Texas-Instruments/AM1705DPTP4?qs=OHhYoCux73mo66HVBI2aig%3D%3D&countryCode=JP¤cyCode=JPY

交換部品 (4個買って3回失敗した)
- はんだごて: 白光(HAKKO) ダイヤル式温度制御はんだこて これじゃなくてもいいですが. 420度設定で使った
- はんだ: 細いやつがいい。
- フラックス: はんだをつきやすくするためのもの。表面実装部品のはんだ付けには必須
- はんだ吸い取り線: 部品をとった後のクリーニングに使う。はんだを乗せすぎたときにも使う
- こて先: ある程度接触面積があるやつでないと熱が伝導しない。しかし大きすぎてもいけなく難しい。正確な型番を忘れてしまったが次のようなもの
- リワークステーション: ホットエアーガンとも。温度調整可能な熱いエアーを出す。
- ホットプレート: 基盤を下から温めないとMCUを付け外しできない。
- はんだつけ用顕微鏡: 悔しいけど肉眼では到底無理だったと思う
- アートナイフ: 表面実装部品を取り外すときに足を切るのに使う。
同じ修理手順が効果があると思われる機種
Clavia NORDの各機種で同様の故障状況が報告されているため、修理方法も共通の可能性が高いと思われる
分解手順
外装のネジ外し

横 5個 x 2 
ナットもあるので注意

裏側 2種類の長さのネジがある 
背面 赤いところと黒いところにそれぞれネジ
上面のフタあけ

フロントパネルとは1つのケーブルでつながっている。黒いコネクタ - ケーブルはマザーボードにメモリを止めるのと同じような方式の可動の爪があるコネクタで止まっているので、両側を倒して開ける
- ケーブルを取り外すと開く

開いた状態。 - 基盤の左手がメインボード、右手が電源基盤。電源基盤は数万円で買える。メインボードは買おうとすると20万円くらいするらしい。
メインボードのケーブル外し
- メインボードは6か所ケーブルのコネクタがあるので外す

メインボード右側 コネクタ4か所 - 図上部電源基盤からのコネクタは爪を開いて取り外す
- 図真ん中オレンジのコネクタ2つはペンチなどで慎重に引き抜く
- 図下部のコネクタもペンチで引き抜く

メインボード左側 コネクタ2か所
- メインボードを止めているネジを外す
- ジャックのネジを外す

ジャックがねじ止めされている。 
MIDI端子はT8のトルクスレンチで外す
- これでメインボードが外れる

取り外したメインボード
鍵盤部の取り外し
- ネジを外す

鍵盤部のネジ
- 鍵盤部の両端のケーブルはとても折れやすい。私はこれを断線させてしまったとみられる。鍵盤部の左右にむき出しについているので鍵盤をたてかけてはいけない。またケースのフタをつけるときにも干渉して負荷をかけないように注意が必要。

鍵盤部左右のケーブル
鍵盤センサの取り外し
- まず鍵盤部を裏返す
- 裏のケーブルなど5か所のコネクタ・ねじ止めを取り外す

オレンジコネクタが2か所、白コネクタ左右で2か所、部品のねじ止め1か所を外す
- 固定している金属部品を外す

金属部品 - この部品はもともとついていたのと違うところにつけることもできてしまうので注意
- 基盤のねじ止め多数を外す
- 鍵盤の下の基盤が取れる

鍵盤の押下を検出する基盤
センサの清掃
- 鍵盤の基盤についている緑色のラバー接点ストリップをめくって外して、接点を清掃する
- 基盤側の金属接点はイソプロピルアルコール (IPA) で清掃 (綿棒+70%前後のイソプロパノールで軽く拭くとのこと)
- ゴム側は中性洗剤で清掃(とのこと。)
- syntaur.com
- 接点ストリップの取り付け
- 取り付けが上下逆になると正しくベロシティが検出されなくなるので注意。
- 穴にゴムの突起をはめていくのだが、難しい。大きい突起は押し込んで少し頭が出たら反対側から引っ張る。小さい突起はとがったもので押し込む。
- なお反応がおかしいキーも、見たところ特に違いはなかった。また今回は修理の結果起動に失敗したので、自分の対処で改善したかは不明
MCUの交換
- メインボードのラベルの付いた部品が今回交換対象のMCU

型番確認のためラベルをはがした
- 故障したMCUのピンの足を切っていく。基盤に傷をつけないように、チップの足の根本のほうをアートナイフで切断する。
- 足を切断してもMCUは外れない。MCUの中央にはヒートシンクがありこれが基盤にはんだ付けされているためである。
- これを外すために裏側からホットプレート220度であたためつつ、320度のエアを上から吹きかけて30秒程度待ち、MCUを持ち上げたら外れた
- 参照した記事ではホットプレートは170度、エアは260度、30秒と書いてあった。https://www.reddit.com/r/nordkeyboards/comments/1j6utsx/fixed_my_dead_stage_3_mainboard/

MCUを外した状態。
- 基盤の半田のパッドには切ったMCUの足がのこっているので、これをはんだごてで溶かして清掃する。
- 基盤の半田のパッドにはんだを乗せていく。すこしずつ半田をとかしながらこて先を移動させる。このときブリッジしないように、かつすべてのパッドにはんだが乗っているようにする。
- 基盤のヒートシンクに少しはんだを乗せる。これを増やしすぎるとその上に乗せたMCUが浮いて位置合わせが難しい。なさすぎるとヒートシンクのはんだがとけたタイミングでMCUが動かないのでそれもそれで難しい。
- 基盤上にMCUを絶妙にぴったりの位置で配置する。
- はずしたときと同様に、MCUの裏側からホットプレートで熱を加え、上からエアをあてる。ヒートシンクのはんだがとけると、MCUが少し沈む。沈んだタイミングで熱から外し、足の最終的な位置合わせをする。数秒たつとヒートシンクのはんだが固まり位置合わせできなくなる。ここが最も難しかった。
- 熱を加える前に、あらかじめMCUの足の位置をはんだのパッドの位置と絶妙に合わせておくとよい
- 足をはんだ付けする。この時半田を追加する必要はなく、すでにパッドに敷いてある半田でつける。足の上から熱をかけてパッドと足の間に半田をとかしてつける。

作業の様子
- 最後にはんだの不良をチェックする。足を1本ずつピンセットなどで軽く触って動いてしまうのならはんだ付けできていない。またブリッジもしていたら吸い取り線などをつかいつつ解消する。
動作確認
- MCUのはんだ不良があったときには、電源を入れると全部のLEDが点灯するという状況だった。
- そのあとはんだ不良を修正するとNORD StageのLoad画面がうつった。修理前は電源が入らずLoad画面がうつらなかったので、おそらくMCUの交換で電源が入らない問題は解消したと思われる
- しかし、修理時になにか別の故障をさせてしまったらしくSample Flash Error Init Fail [0]で起動しなくなった

エラー
後記
- 故障は新品で購入して4年で生じました。ネット上では同じ故障が2, 3年で生じているケースも多数あって悪評高いです。これまでRoland, Yamaha等いろいろなキーボードを使ってきましたが、こんなにすぐ使えなくなるキーボードはありませんでした。
- 修理は日本では現状"受付まで"2か月待ち、半年という場合もあったようです。国内の他社はもっと早いです。サポートも品質も悪いとなると今回の経験から私はClaviaはもう買わないかなと思っています。
- 修理費用は国内では電源が付かなくなる事象に対してメインボード交換対応で7万円です。海外だと$800〜$1,200と報告されています。


























